allabout japan
allabout japan

GO WILD TOKYO 1/ 東京で大自然を感じる伊豆大島サイクル旅へ

GO WILD TOKYO 1/ 東京で大自然を感じる伊豆大島サイクル旅へ

東京といえば高層ビルやにぎやかな街並みを思い浮かべるかもしれませんが、実は大自然も存在するのをご存知でしょうか。都心から少し足をのばした多摩・島しょ地域には驚くような自然が広がり、都会の喧騒を離れ、リフレッシュできる絶好の場所が東京にもあるのです。最近、旅行者に人気のアドベンチャーツーリズムは、「自然」「アクティビティ」「文化体験」の3要素のうち2つ以上で構成される旅行のことを指します。日常を離れ、新たな発見をする旅へ出かけてみませんか? 今回から特集「GO WILD TOKYO」として、東京に存在する“大自然”を感じられる旅を紹介していきます。

By AAJ Editorial Team

シリーズ初回は、伊豆大島をご紹介。伊豆諸島最大の島で、その約97%が自然公園法で保護されており、豊かな自然景観と生態系が息づく。約8000年前より人が暮らしていたと言われ、人と自然が共生してきた歴史も感じることができる。訪れたのは、島内で電動アシスト自転車のレンタルを行っている「御神火(ごじんか)サイクル」。こちらのレンタサイクル店では、この島の自然や歴史を体験しながら、スタイリッシュな自転車で島内を快適に巡る旅を提案している。

今回、 2016年に来日し、現在は日本の魅力をSNSで海外に発信している、インフルエンサーのクリスティーナさんに、この電動アシスト自転車を使って、伊豆大島のアドベンチャーツーリズムを楽しんでもらった。

東京で大自然が満喫できる島、伊豆大島へ

東京にいながらダイナミックな自然の中で、アドベンチャーツーリズムを味わえる伊豆大島(東京都大島町)。

東京で大自然が満喫できる島、伊豆大島へ

伊豆大島は、都心から南へ120㎞の位置にあり、竹芝客船ターミナルから高速ジェット船で最短1時間45分、空路であれば調布飛行場からわずか25分でアクセスすることが可能だ。この島の魅力は、なんといっても島の海と山。広い海に浮かぶ活火山の島なので、山から噴煙が上がるなど、大地の息吹を体感できる。三原山トレッキングや、島一周サイクリング、マリンスポーツなどのアクティビティも楽しめ、アドベンチャーツーリズムを存分に満喫できる。

この島で「御神火サイクル」を運営する髙木巌(いわお)さんは、伊豆大島の象徴とも言える三原山山頂付近にて1928年から「御神火茶屋」を営む五代目。同店は、トレッキングで訪れる人々の拠点ともなっており、オーナーの髙木さんは、伊豆大島を知り尽くしている人物だ。
「都心から2時間で来られる島ですが、空気が違います。夏は都会より涼しくて、冬は暖か。自転車であれば、島の海風を直接感じることができるんです」(髙木さん)

そんな「御神火サイクル」が提供するのが、カリフォルニア発の電動アシスト自転車《SUPER 73》だ。パワフルかつ頑丈なフレームと、太いタイヤが持ち味で、安定した走行が可能。オフロードでも安心して乗ることができるので、島をサイクリングするのにはピッタリ。火山活動によって形成された地形では、なだらかな道から急勾配の坂道まで多彩なルートが揃っていて、走るたびに異なる景観を楽しめるのが最大の魅力だ。心地よい風と共に、島の魅力を見つけにオシャレな電動アシスト自電車で出発!

元町の御神火サイクルに並べられた電動アシスト付き自転車SUPER 73。南カリフォルニア発で自転車の乗りやすさとEバイク独特の感覚が味わえる。

伊豆大島への船旅の玄関口のひとつ、元町港。海岸沿いの「サンセットパームライン」へのアクセスポイントでもある。

絶景と共に走る!伊豆大島で楽しむ大自然サイクリング

三原山の噴火による細かい溶岩や火山灰が降り積もる、黒い砂漠=裏砂漠。伊豆大島の東に位置しており、さまざまなルートからアクセスが可能だ。ただし、自転車や車での進入不可エリアもあるため現地にて要確認。

絶景と共に走る!伊豆大島で楽しむ大自然サイクリング

初心者が気軽にアドベンチャーツーリズムを楽しめるオススメのスポットは、「サンセットパームライン」。拠点となる元町港から往復で1時間もかからない距離だ。海岸沿いの一本道で、地元の人たちも散歩やランニングを楽しんでおり、天気が良い日は富士山を臨むこともできる。早速走ってみると、伊豆半島が目の前に広がり、その緑豊かな山々と海岸線がすぐ近くに感じることができる。本州からこれほど近い場所で大自然を満喫できることに思わず感動した。

一方、上級者にオススメなのは、伊豆大島北部を巡るサイクリングルート。サンセットパームラインからスタートし、三原山の裏砂漠、森林地帯、樹齢800年の桜の原木 桜株 (さくらっかぶ)、あじさいレインボーライン、御神火茶屋を経て、元町港へと向かうルートである。

見どころとして、まず圧巻なのが樹齢800年の桜の原木である桜株。自然の力強さを感じさせるこの木は、ルートのハイライトとなっている。また、あじさいが咲き誇る「あじさいレインボーライン」では、美しい景色が楽しめる。アップダウンのある道のりだが、電動アシスト自転車があればスイスイ。元町港へ向かう最後の下り坂では、街並みと海が広がる絶景を楽しむことができ、その爽快感は格別である。

特に、元町の街並みとその先に広がる海の絶景は、ルートの大きな見どころ。緑の森と青い海が織りなすパノラマビューは、まるで映画のワンシーンのようで、自然の雄大さに心が洗われるような喜びを味わえる。

「対岸の伊豆半島や富士山が本当に近く感じて、まるで手が届きそう!自転車だと自由に動けて風を感じるのが最高です。砂漠の中を走るなんて滅多にできないから、この体験は特別でした。自然のアクティビティが好きなら、絶対に楽しめると思います!」(クリスティーナさん)

野生の白い桜株。あじさいレインボーラインの途中にあり、サイクリングでぜひ立ち寄ってもらいたい。

さらに、本格的なサイクリストに人気なのは、一日かけて島を一周する大島一周道路コース(約43㎞)。元町から裏砂漠、筆岩、波浮港(はぶみなと)、地層大切断面など、島の自然や文化にたっぷり触れながら、標高約800mの起伏に富んだルートを巡るので、本格派も大満足のコースとなっている。

圧巻なのは、地層大切断面に広がる幾重にも重なった火山活動の痕跡。異なる時期の噴火による地層がはっきりと分かれ、その壮大なスケールが大自然の歴史を物語っている。島の成り立ちを感じさせるこの光景は、一見の価値あり!

元町と波浮港(はぶみなと)のほぼ中間に位置する、地層大切断面。特徴的な縞模様は、約100回の大噴火によって噴出物が降り積もったもの。

元町港からサンセットパームラインの中間にあるのが、海に突き出た丘、赤禿(あかっぱげ)。この赤色は、噴火したマグマが酸化した色。

ノスタルジックな港めぐりと椿油工場見学で、島の文化を知る

島の南部にある波浮港。もともと9世紀に発生した火山噴火による火口湖で、1703年の元禄地震による津波でその火口壁が崩れて海とつながったとされている。

ノスタルジックな港めぐりと椿油工場見学で、島の文化を知る

自然体験だけではなく、島の歴史や文化を感じることできるのも、アドベンチャーツーリズムの醍醐味。自転車であれば、ふと気になる場所で足を止め、ゆっくりと時間を過ごすこともできる。

島の南にある波浮港(はぶみなと)は、元町から自転車で1時間ほどの距離。100年ほど前に多くの文化人がこぞって訪れたエリアで、人気の散策コースのひとつだ。伊豆大島にゆかりのある作家や詩人たちの作品を紹介するパネルや碑などが点在する『文学の散歩道』では、島の風景と情緒を味わうことができる。

「昔ながらの日本を感じられる街並みはフォトスポットとしても魅力的で、思わず写真を撮りたくなる場所ばかり。有名な『伊豆の踊り子』の舞台としても、日本文学が好きな人にはたまらないですよね。ストーリーを感じるロマンティックな風景が広がっていて、ゆっくりと自分の時間を感じながら自由に散策できるのも、自転車ならではだと思います。」(クリスティーナさん)

古い木造の建物が並ぶ波浮港の町並みは、著名な文豪を始め、多くの観光客を惹きつけてきた。古民家を活かした飲食店や宿泊施設もオススメ。

伊豆大島の特産と言えば、明日葉(アシタバ)や島のり。揚げたての天ぷらやおにぎりは知られざる逸品!

江戸時代から食されてきたという明日葉や島のりは伊豆大島の名産品だが、中でも島の歴史の中で重要な特産として挙げられるのが、奈良時代には既にあったという「椿」。

伊豆大島は、温暖多雨で、水はけがよい火山性の土壌のため、こうした環境に強い椿が自生していたという。そのため伊豆大島の人々は、椿を防風林として、また炭や油を利用するために植え続け、一説によるとその数は300万本にも及ぶと言われている。伊豆大島のシンボルとも言うべき椿で作られた椿油は、江戸時代には多くの庶民の生活に根付いており、伊豆大島の主要産業の一つとして確立されていたのだとか。

そんな歴史ある椿油を作る工場を訪れるのもおすすめだ。元町にある「株式会社椿」の工場で実施している工場見学では、伊豆大島の椿の歴史や島民が椿とどう関わってきたかなど、地元の方から学ぶことができる。椿の実の圧搾、精製のプロセスを見るのも楽しい。同社は、圧搾時に熱を加えず、精製もろ過で行う独自の製法にこだわるため、高品質の椿油が何よりの自慢だ。
さらに、椿油の新しい価値を提案するため、フェイスケア用のコスメへの活用や、サラダなどにかける食用の製品開発なども行っている。

「椿油は、血中コレステロールを減らして生活習慣病を予防する働きをもつとされる『オレイン酸』がたっぷり含まれているため、健康への感度が高い方々からも注目されています」と、工場長の福井さんは話す。見学したクリスティーナさんも、「椿油は、髪に付けるなど美容目的が中心だと思っていました。食用で使うなんて知らなかったですね。大島牛乳でつくったジェラートにもかけてみたいです」と感心しきりだった。

株式会社椿では、実際に椿油の精製の過程を見ることができる。

島の象徴「三原山」を開拓し、新しい魅力を発信する「御神火サイクル」

島の象徴「三原山」を開拓し、新しい魅力を発信する「御神火サイクル」

「御神火サイクル」の髙木巌さん。

「伊豆大島は日本ジオパーク(ユネスコが支援する取り組みで、地球と生命の関わりを学べる場所)に認定されています。今後は、認定ジオガイドとも連携して、この島の地質や地形を楽しく学びながらサイクリングできるプログラムも提供したいです」。今回のアドベンチャーツーリズムを企画している「御神火サイクル」の髙木さんは、そう先を見据える。

伊豆大島では、吹き上がるマグマや赤く染まった空を“御神火(ごじんか)”と呼び、敬ってきたと言う。三原山山頂付近にある「御神火茶屋」にその名を冠したのは、初代オーナーの髙木久太郎。三原山の登山コースを開拓したパイオニアでもあり、幼い頃は巌吉(いわきち)という名前だったそう。髙木さんの名前が巌なのは、単なる巡り合わせではなく、開拓者のスピリットが引き継がれているのかもしれない。

髙木さんが御神火茶屋を引き継いだのは2022年。コロナ禍の影響を受け、店を閉じるという話があり、五代目として継ぐ決心をしたという。
「長い歴史を誇る御神火茶屋を、私の代で閉じることはできません。レンタサイクルにも『御神火』という名前をつけたのは、今も島に息づく自然への敬意を、もっと多くの人に知ってもらいたいと思ったからです。もし伊豆大島に来ることがあったら、アドベンチャーツーリズムを通して、自然の息吹はもちろん、島の人たちがずっと大切にしてきた自然への畏敬の念もぜひ感じてみてください。」(髙木さん)

御神火サイクル
住所:東京都大島町元町2丁目17-8ハリカ大島店内 【地図】
☏04992-2-3351 営業時間9:30~18:00(月~日曜)
Webサイト:https://gojinkacycle.com/
SNS:https://www.instagram.com/gojinka_cycle/

【本州から大島への主なアクセス】
航路:東京・竹芝客船ターミナル~大島(1日2~3便/東海汽船)高速船で約1時間45分
空路:調布飛行場~大島空港(1日3便/新中央航空)約25分

【大島から御神火サイクルへのアクセス】
クルマ:岡田港から17分(約7.7km)、元町港から2分(約650m)、大島空港から9分(約4.5km)

【アドベンチャーツーリスト】
南クリスティーナ
旅行コンテンツクリエイター。日本に関するコンテンツ制作の経験が豊富で、知られざる観光地を紹介し、海外や国内のフォロワーに新しい視点を提供している。現在は、旅行インフルエンサーに留まらず、観光業界のプロフェッショナルとして、PR案件や観光アドバイザー、旅行プランナーなどの役割で活躍している。SNSの月間リーチ数は400万人以上([Instagram]。

※本内容は、「(公財)東京観光財団 アドベンチャーツーリズム推進事業助成金」を活用して実施しています。

文/大田原 透 写真/石原敦志

AAJ Editorial Team

We love Japan, and we hope we can help you find something you can love about it, too! We're always looking for something fun, weird, exciting or intriguing to highlight just how fascinating this place can be.

allabout-japan.com